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写真の中だけのあこがれの人との美しい恋あれこれ
久しぶりに交際希望の紹介が舞い込んだ
山本 明子さんは関西の短大を卒業後、派遣社員として勤務する34歳、
さらに注目すべきものは、写真に写った彼女の素敵さである。
写真の中にいる彼女は、おしとやかな美人。
知的で清楚に見えた。
私はお見合い当日まで何度も写真を見た。
仕事から帰った夜、一人で紹介書を取り出して、
まじまじと写真を見ている。
食事の合間に何度となく取り出して、
しげしげと見つめる。
夜寝る前にも、その写真をじっくり見つめる。
夜中、眼を覚ました時にも、
何度も写真を見ている自分に気づく。
何度も何度も見ているうちに、
ますます美しく見えた。
彼女と早く会いたかった。
JRの大阪駅西口で待ち合わせる。
わくわくして足が震えた、その瞬間彼女が現れた。
愕然とした、写真とあまりにも違っていたからです。
全く別人と思った。
彼女の母親が来たのかと思ったほどです。
出合ったときに、しらけてしまうという定番のパターン。
ドラマの世界ではよくあることだが、婚活でもあるのか。
あまりの落胆に何が何だかわからなくなり、
言葉が出てこなかった。
それから、セーターが似合っていないなあとも思った。
彼女は、普段着できた。
喫茶店に行くために、梅田の地下街をうろうろし、
イタリアンレストランに入る。
お店にはいるとき彼女は私の後ろを歩いてきている。
この人と話をしていると、会話が質問調になってしまう。
相手は必要なこと以外はしゃべらない。
私の苦手なタイプである。
経歴からして、明るい人を想像していたのだが表情は暗い。
二言、三言話をしたが、会話が続かない。
30分ぐらいして彼女は自分の腕時計を気にしている。
早く帰りたいのかなあと思う。
お見合いで女性と交際するときに、いつも困ることがある。
それはどの辺でお開きにするかということ。
いつも、喫茶店に入って、お茶を飲む。
その後どこに行くかで迷う。
もっとも、お茶を飲んでその後、
食事でも行こうかという女性はほとんどない。
勘定を済ませて店を出てから、今日は時間があるかと聞くと、
彼女は私は地下鉄に乗りますのでといって別れの挨拶をすると消えていった。
食事に行くかどうか迷う必要はなかった。
彼女と別れた後どっと疲れが出た。
わずか1時間ほど会って話をしただけなのに、
1日の仕事を終えたように疲れた。
10日間ほどだったか、私は彼女と恋愛をしていた。
具体的には彼女の写真の人と恋をしていた。
実際に会うまでの1週間だけ、彼女は私の恋人であり理想の人であった。
しかし、理想は一瞬にして壊れてしまった。
写真の彼女は、素晴らしく、美しく、やさしさに満ちた人だった。
今まで会ったことがないほど素敵な人に見えた。
そんな彼女と結婚する夢を見た。
一緒に買い物に行き、一緒に食事をする。
知り合いに会ったら、これが僕の奥さんだと紹介して見せびらかす。
彼女は頭が良いので、何でもテキパキとこなし、
子供にもいいお母さんだと呼ばれるだろう。
教育にも熱心で、エリートに育てる。
会う前には、たいへん幸せな気分で、夢がいっぱい膨らんでいたが、
実際の彼女は一緒に生活する妄想の人であった。
これが婚活の現実かと思った。